とくでん書房

徒然なるままに日暮し

現実

バスが僕の軽トラを追い抜いた。

 

重量にすると数倍はあろうかという大型バスがなんとも軽やかに颯爽と僕の右車線を滑るように追い越した。

 

その刹那、自分の現実を見たような気がした。

 

松山自動車道土居インター手前、僕の軽トラはここで降りるために左のウインカーを出した。その直後、松山発大阪行きの大型バスが僕の軽トラの存在を認識すらしていない様子で追い越していった。

 

別に悲観しているわけではない。

そもそもそんな年ではない。

単に、ああ、これが今の僕の現実なんだと爽やかに染みただけ。

 

都会に憧れ、自分が何者かわからなかった時代を経て、結局何物にもなれなかった僕が地元で小さな仕事をしている。

大型バスではなく、大阪行きでもない。

 

もちろん現実を受け入れていないわけではない。

とっくに受け入れている。

ただ、自分のたっている場所を再認識できた、というだけ。

 

強がりでもなんでもなく、

大型バスが、大阪行きが羨ましくはなかった。

 

心穏やかに大型バスを見送った。

 

じゃあね。