非望 ~もやもやした小説

その男は立ちすくんでいた。 自分の人生を構成しうるいくつかのものをたった今、失った。 失ったといえばまだ救われるのかもしれないが、実際は自ら、捨てた。 バブルも終わり、就職氷河期という言葉もずいぶん定着したころ、その男はサラリーマンという至極平凡な一歩を社会に踏み出した。 特に望んだ仕事ではなかったが…