一番暗いのは夜ではなく日が沈みうす暗くなった時間だ。
真っ暗の中での車のライト、外灯、看板。
この田舎でさえも夜の黒と光の対比は明るさを感じさせる。
まだ黒ではない時間、沈んだ太陽の名残に押され車のライトも外灯も同じ明るさのはずではあるが明るくない。
少年は目が悪かった。
一日でもっとも暗いこの時間が嫌いだった。
目が悪いものにとってこの時間が一番ものの境界線がはっきりしないからだ。車の形も人の形もはっきりしない。
光が足りない。光が足りない。
境界線がはっきりしない状態は少年をいらいらさせた。
眼鏡をかけるようになり、そして大人になっても境界線でモノを見てしまう癖は抜けることがなかった。